毎朝のゴミ出しの集積所、夜道を照らす防犯灯、地域のお祭りや防災訓練。私たちが何気なく使っているこうした暮らしの土台は、実はご近所同士でつくる「自治会」が支えていることが多いです。
一方で、引っ越しをきっかけに「自治会ってどんなことをしているの?」「自治会への入会は強制なの?それとも任意なの?」と気になった方もいるのではないでしょうか。
この記事では、国や市の資料をもとに、自治会の加入のルール、四日市市・津市の加入状況、ゴミ出しをめぐる裁判、そして自治会が地域でどんな役割を果たしているのかを整理しました。
結論:自治会への加入は「任意」です
まず結論からお伝えすると、自治会への加入は法律上の義務ではありません。
この点については、2005年(平成17年)4月26日の最高裁判所の判決が基準になっています。判決では、自治会はいわゆる強制加入団体ではなく、規約に退会を制限する定めがない場合は、会員はいつでも一方的な意思表示で退会できる、と判断されました。
四日市市も、自治会加入を促す条例のパンフレットの中で「自治会は強制加入団体ではありません」と明記しています。市として加入をお願いしてはいますが、強制ではないという立場です。
つまり、入るか入らないかは各世帯が自分で決めてよい、というのが基本的な考え方です。
ただし、任意だからといって「入らなくても何も困らない」とは限りません。このあと紹介するように、ゴミ集積所や防犯灯など、日々の暮らしに関わる部分を自治会が支えているケースが多いからです。
全国の加入率は10年で約6ポイント低下
総務省の調査によると、加入率を世帯単位で把握している全国600市区町村の平均加入率は、2010年(平成22年)の78.0%から、2020年(令和2年)には71.7%まで下がっています。
加入率が上がった自治体はわずか14団体で、全体の約9割にあたる530団体で加入率が下がっていました。
また、人口20万人以上30万人未満の市区町村は、10年間の平均加入率の減少幅が7.6ポイントと、人口区分の中で最も大きくなっています。人口約30万人の四日市市や、約27万人の津市もこの規模に近い都市です。
四日市市・津市の加入状況
四日市市:加入率83.7%、全国平均を大きく上回る
四日市市自治会連合会によると、2025年(令和7年)4月時点で市内の単位自治会は721、加入世帯は109,406世帯、加入率は83.7%です。市全体を28地区に分け、地区ごとに連合自治会がつくられています。
市の資料では、2015年(平成27年)4月時点の加入率が85.2%、2019年(平成31年)4月時点が85.3%とされており、長く80%台半ばを保ってきました。全国平均の71.7%と比べると、かなり高い水準です。
ただ、直近では83.7%とゆるやかに下がっています。
津市:市内のほぼ全域に自治会、約96%の自治会が「加入率8割以上」
津市は、市としての全体の加入率を公式サイトでは公表していません(2026年11月時点で確認できた範囲)。
参考になるのが、津市が2020年(令和2年)に市内の全自治会(1,020自治会)を対象に行ったアンケートです。
自治会ごとの加入率は次のとおりでした。
・全世帯が加入 :423自治会(48.9%)
・80%以上99%未満:410自治会(47.4%)
・50%以上79%未満:28自治会(3.2%)
・50%未満 :4自治会(0.5%)
8割以上の世帯が加入している自治会が全体の約96%を占めており、多くの地域で加入率が高いことがうかがえます。
一方で、同じアンケートでは「自治会員の高齢化」(629件)と「役員等のなり手不足」(626件)が課題の上位に挙がっています。回答した自治会の7割以上が、この2つを課題として感じていることになります。
自治会に入らないとゴミは捨てられない?
自治会をめぐる話題で最もトラブルになりやすいのが、ゴミ集積所(ゴミステーション)の問題です。
そもそもゴミの収集は市町村の仕事
家庭ゴミの収集・処理は、廃棄物処理法にもとづいて市町村が責任を持つ仕事です。ただ、多くの地域では、ゴミ集積所の設置場所の調整や、ネット・ボックスの購入、清掃や当番などの「管理」を、自治会や利用者が担っています。
このため、「自治会費でつくって、自治会員が掃除している集積所を、会費を払っていない人が使うのは不公平だ」という声が出やすく、トラブルの原因になっています。
神戸市の裁判:自治会の「利用禁止」は違法と判断
全国的に注目されたのが、神戸市の住宅街で起きた裁判です。
浜松市議会の一般質問資料(2023年11月)によると、この自治会は総会で次のようなルールを決めていました。 ・役員や掃除当番を担う住民:年会費3,600円 ・掃除当番などを担わない「準自治会員」:年会費10,000円 ・会費を払わない非自治会員:ゴミ捨て場の利用禁止
自治会を退会していた夫妻は、ゴミ捨て場を使えなくなったとして、2020年に自治会を相手に慰謝料と、ゴミ捨て場を利用する権利の確認を求めて提訴しました。
判決は次のとおりです。 ・一審(神戸地裁、2021年9月):夫妻にはゴミ捨て場を利用する権利が「ある」とし、自治会の対応は違法。損害賠償20万円 ・二審(大阪高裁、2022年10月):自治会の対応は違法としつつ、ゴミ捨て場を利用する権利そのものは「認めない」。損害賠償30万円
一審と二審で「利用する権利」の判断は分かれましたが、会費を払わないことを理由にゴミ捨て場の利用を一切認めない対応は違法、という点では一致しています。その後、双方が上告し、舞台は最高裁に移りました。
※最高裁の判断について、公的機関の資料では確認できませんでした。(要確認:記事公開前に最新状況をチェック)
実際の現場ではどう対応している?
自治会のゴミ集積所管理について、愛媛県新居浜市が2023年(令和5年)に市内の自治会に行ったアンケート(237自治会が回答・複数回答)では、未加入世帯への対応は次のようになっていました。
・利用を認めている:125件
・やむを得ず黙認:69件
・当番の割り当て:28件
・利用料の徴収:19件
・未加入者の利用を認めていない:19件
利用を認めたうえで、清掃当番や利用料(維持協力金)の負担をお願いする、という形が現実的な落としどころになっているケースが多いようです。
また、川崎市議会には2024年(令和6年)、自治会を退会しようとしたところ「ごみ箱は使わせない」と言われた住民から、自治会非加入世帯のゴミ出し方法について市の方針を明確にしてほしいという陳情が出されています。全国どこでも起こりうる問題だといえます。
困ったときはまず市役所に相談を
もし「自治会に入らないならゴミ集積所は使わせない」と言われて困った場合は、まず市役所のゴミ担当の窓口に相談するのがおすすめです。地域ごとの事情に合わせて、近くの集積所の利用方法や、新しい集積所の設置などを一緒に考えてもらえます。
反対に、自治会に加入しない場合でも、集積所の掃除やネットの管理などは誰かがやってくれているものです。利用料や当番など、「使う人として負担できること」を話し合う姿勢があると、トラブルを防ぎやすくなります。
自治会がなくなったら困ること
「入らなくても困らない」と感じる方もいるかもしれませんが、もし地域から自治会がなくなると、次のようなことが起こる可能性があります。
1. ゴミ集積所の管理をする人がいなくなる
前述のとおり、集積所の場所の調整、カラスよけネットの購入、清掃、分別されていないゴミへの対応などは、多くの地域で自治会が担っています。担い手がいなくなれば、集積所が荒れたり、新しい集積所をつくる調整が難しくなったりします。
2. 夜道を照らす防犯灯が維持できない
津市の公式サイトでは、生活道路に設置されている防犯灯は自治会が設置・維持管理していると説明されています。電気代や球の交換を負担する人がいなくなれば、夜道が暗くなるおそれがあります。
3. 災害時の助け合いが難しくなる
自治会は、自主防災組織や防災訓練、街頭消火器の設置なども担っています。四日市市の条例の前文でも、避難行動要支援者への対応や、多発する自然災害への備えなど、地域の課題を解決するうえで自治会の役割はますます重要になると書かれています。災害のときに「誰がどこに住んでいて、誰の助けが必要か」を把握している組織がなくなるのは大きな不安材料です。
4. 子どもや高齢者の見守りが手薄になる
登下校の見守りや、ひとり暮らしの高齢者への声かけなども、自治会が関わっている活動のひとつです。四日市市の条例でも、子どもの見守りや高齢社会への対応が自治会に期待される役割として挙げられています。
5. 地域の情報が届きにくくなる
広報紙や回覧板の配布も自治会の大切な仕事です。行政からのお知らせや、地域のイベント・防災情報が届きにくくなります。
ただし、この配布作業は自治会にとって大きな負担にもなっています。津市のアンケートでは、広報誌などの配布について「少し負担」「かなりの負担」と答えた自治会が合わせて53.5%にのぼりました。
6. お祭りや運動会など、顔を合わせる機会が減る
地域のお祭り、運動会、清掃活動など、ご近所同士が顔を合わせるきっかけも減ってしまいます。普段から顔見知りであることは、防犯や災害時の助け合いにもつながります。
まとめ
・自治会への加入は任意で、2005年の最高裁判決でも「いつでも退会できる」とされています ・全国の加入率は2010年の78.0%から2020年の71.7%へと低下しています ・四日市市の加入率は83.7%(2025年4月)と全国平均を大きく上回り、加入促進の条例もあります ・津市は約96%の自治会で加入率8割以上(2020年調査)ですが、役員のなり手不足や高齢化が大きな課題です ・神戸市の裁判では、会費を払わない住民のゴミ捨て場利用を一切禁止した自治会の対応が、一審・二審とも違法とされました ・自治会がなくなると、ゴミ集積所や防犯灯の管理、防災、見守り、情報伝達などに影響が出るおそれがあります
「入る・入らない」は自由ですが、自治会が担っている役割を知ったうえで判断することが大切です。また、自治会の側も、役員の負担軽減や活動の見直しなど、時代に合ったかたちへの変化が求められているといえそうです。


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