道路に除草剤を撒いていい?全国の自治体の見解と注意点

歩道の縁石のすき間や路肩だけ、草が茶色く枯れているのを見たことはありませんか。「家の前の道路の草が伸びてきたけど、除草剤を撒いてもいいの?」と迷ったことがある方も多いと思います。

実は、国や県も場所を選んで道路に除草剤を撒いています。一方で、「道路では使わない」と決めている市もあり、自治体によって考え方はさまざまです。

この記事では、国・県・市が公開している資料や回答をもとに、「道路に除草剤を撒いていいのか」を整理します。個人で撒くときの注意点や、草が気になるときの相談先も紹介します。

目次

結論:道路に除草剤を撒くことは一律に禁止されていない

道路に除草剤を撒くことを、法律で一律に禁止する決まりはありません。実際に、国や県も場所を限定して道路に除草剤を撒いています。

たとえば栃木県の烏山土木事務所は、令和4年度から道路での除草剤散布を試行しています。散布する範囲を限定し、登録農薬を希釈倍数どおりに使い、風の強い日は避け、看板で事前に予告するやり方です(栃木県 烏山土木事務所)。

住民が撒くことについても、「撒かないように」と周知する自治体はあるものの、はっきり禁止しているところはほとんどありません。多くの自治体は、禁止も許可もしない中間的な立場です。

そもそも公園や庭の芝生の管理では、芝以外の雑草だけを枯らす除草剤を撒くのはごく一般的な方法です。除草剤そのものが「悪いもの」というわけではありません。大切なのは、「何を、どこに、どう撒くか」です。

個人が道路に撒くときの注意点3つ

行政が撒いているからといって、個人が同じように撒いていいとは限りません。行政は「登録農薬を使う」「事前に周知する」などのルールを守ったうえで撒いています。個人で撒くなら、次の3つを押さえておきましょう。

① 近くに植物があるなら「登録農薬」を選ぶ

ホームセンターで安く売られている「非農耕地用」の除草剤は、農薬として登録されていません。

国の通知では、街路樹・庭木・芝など「人が栽培している植物」は「農作物等」に含まれるとされています。その管理に未登録の除草剤を使うと、農薬取締法により使用者が罰せられる可能性があります(非農耕地専用と称する除草剤の販売等について)。

街路樹や植え込みのそばで使うなら、ラベルに「農林水産省登録」と書かれ、適用に「樹木等」などがある商品を選びましょう。

② 街路樹・水路・田んぼに届かせない

街路樹を枯らせば、器物損壊に問われるおそれがあります。側溝から水路を通じて田んぼや他人の庭に流れれば、損害賠償の問題にもなります。

風の強い日や雨の前は避け、ラベルの希釈倍数と使用量を守りましょう。散歩中の犬や子どもが触れないような配慮も大切です。

③ 道路管理者に一声かけると安心

道路には、国・県・市などの「道路管理者」がいます。道路法では、管理者以外が道路の維持を行うときの承認(第24条)や、みだりに道路を損傷・汚損する行為の禁止(第43条)が定められています。

個人の除草剤散布がこれに当たるかは状況次第です。広い範囲に撒く場合や、街路樹・植え込みが近い場合は、事前に管理者へ確認しておくとトラブルを防げます。

全国の自治体はどう考えている?

全国の公開資料を見ると、「草刈りが基本で、刈りにくい場所だけ除草剤を使う」という自治体が多いようです。一方で、市道では使わないと決めている市もあります。

場所を選んで使っている自治体

  • 新潟県:「道路除草作業における除草剤使用の基本的な考え方」(令和3年3月)を公開。歩道と車道の境のブロックの目地や中央分離帯など、刈払機が使いにくい場所で使用を検討します。自然公園や湿地などでは原則使わず、地元自治会の同意、通学路では学校関係者の同意も得るとしています。使うのは、農薬登録があり毒物・劇物に当たらない、ホームセンター等で売られている製品です。
  • 栃木県:草刈りの車線規制による渋滞や飛び石事故を理由に、平成31年4月から一部で除草剤を試行。事前・事後の周知、歩行者が近いときの一時中止、強風の日の回避などに留意しています。烏山土木事務所など、県内の各事務所でも実施されています。
  • 浜松市:予算不足で除草回数が年4回から2回に減ったことを受けて検討。100mあたりの直接工事費は、刈り取り4,242円に対し除草剤は2,556円。抜根が難しい場所へ試行を拡大するとしています。

市道では使っていない自治体

  • 千葉市:町内会から「高齢化で草刈りが難しい。除草剤を使えるか」という声が寄せられました。市は「道路においては沿道敷地への影響も配慮し除草剤を使用していない」と回答しています。ただし、町内会が使うことの可否については、土木事務所は「判断しない」という対応でした。
  • 鹿屋市(鹿児島県):「市が管理する道路では除草剤は使わず、機械で除草」。公園では、人が入らない隅などに限り年1〜2回使っています。

三重県内:津市と国の事務所

  • 津市:住民が道路に除草剤を撒くことについて、津市としての見解は示されていません。つまり、禁止も許可もしていない状態です。近隣の市町も同様でした。なお、津市では草刈りのリスクも表に出ています。令和5年2月の「つ市議会だより」では、市道の除草作業中の事故で損害賠償額26万4,623円を決定したと報告され、一般質問でも飛び石事故をなくすマニュアルづくりが求められました。(つ市議会だより 第68号)
  • 国交省 紀勢国道事務所:2019年度(令和元年度)の研究発表で、松阪市から大紀町までの国道を管理する大台維持出張所が、縁石や目地の雑草への除草剤散布を報告しています。施工費は1mあたり145円から41円(約72%減)、作業員は5人以上から2人になりました。中山間地の大台町・大紀町では地元の理解が得られた一方、市街地や団地がある松阪市・多気町では当時、理解が得られなかったとされています。

除草剤と草刈り、それぞれの弱点

道路の雑草対策には、除草剤にも草刈りにも弱点があります。土木の目線で整理すると、次のようになります。

除草剤の弱点

  • 法面(土の斜面)が崩れやすくなる:草の根は土を押さえる役割をしています。根ごと枯らすと、雨で土が流れ、路肩が弱くなることがあります。
  • 側溝から水路へ流れる:道路の雨水は、側溝から水路や川へつながっています。郊外では田んぼの用水とつながっている場所も多く、作物や魚への影響が心配されます。
  • 街路樹や植え込みを枯らすおそれ:樹木の根は見えないところまで広がっています。徳島県の試行でも、植樹帯では樹木にかからないよう慎重な散布が必要だったと報告されています。
  • 枯れ草の片付けが必要:枯れた草は風雨で散らばり、放っておくと側溝を詰まらせます。紀勢国道事務所や徳島県の試行でも、後日の撤去が必要とされています。
  • 住民の不安:通学路や散歩コースでは、子どもやペットへの影響を心配する声が大きくなります。

草刈りの弱点

  • 飛び石事故:刈払機の刃が小石を弾き、車や窓ガラスを傷つけることがあります。津市でも、市道の除草中の事故で損害賠償が発生しています。
  • 渋滞と人手:車線規制や飛び石防止ネットが必要で、5人以上の作業員がかかることもあります。
  • すぐに伸びる:根が残るため、刈ってもしばらくすると元通りになります。縁石や舗装のすき間の草は、舗装を傷める原因にもなります。
  • 費用:紀勢国道事務所の大台維持出張所では、除草費が年約2,600万円と、維持修繕費の約4分の1を占めています。

自治体が除草剤を「全面禁止」でも「全面解禁」でもなく、「場所を選んで使う」としているのは、このバランスを取った結果です。防草シートやコンクリートで草を生えにくくする工法を組み合わせることもあります。

家の前の道路の草が気になるときは

いちばんの近道は、その道路の管理者に連絡することです。

  1. 道路の種類を確かめる:国道の標識(青い逆三角)や県道の標識(六角形)がない生活道路は、多くが市町村道です。
  2. 管理者に連絡する:市町村道は市役所・町村役場の道路担当課、県道と一部の国道は県の建設事務所、そのほかの国道は国交省の国道事務所が担当しています。わからなければ、まず市役所に聞けば案内してもらえます。
  3. 場所と困りごとを具体的に伝える:住所や目印、写真に加えて、「交差点の見通しが悪い」「歩道が狭くなっている」などを添えると、優先度を判断してもらいやすくなります。
  4. 自分で除草剤を使いたい場合も、先に相談:範囲が広い場合や、街路樹・植え込み・水路が近い場合は、管理者に一声かけておくと安心です。自治会での清掃活動に、道具の貸し出しやゴミ回収の支援をしている自治体もあります。

まとめ

道路の除草剤は、法律で一律に禁止されているわけではなく、国や県も場所を選んで使っています。人手不足が進むなかで、今後は使われる場面が増えていくと考えられます。

一方で、薬剤や場所を間違えると、街路樹を枯らしたり、水路や田んぼに影響したりするおそれがあります。個人で撒くなら登録農薬を選び、周りへの影響を確かめ、迷ったら道路管理者に相談しましょう。

参考資料

はなお
地域ブロガー
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