ある日届く「個人情報流出のお知らせ」。お詫びの文面とともに「現時点で悪用の事実は確認されていません」と書かれていても、「じゃあ、漏れた情報はどこに行くの?」と不安になる方は多いと思います。
この記事では、漏れた個人情報が誰の手に渡り、どう使われるのかを、個人情報保護委員会(国の行政機関)や国・県の資料をもとに整理します。あわせて、「お知らせ」が届いたときにやることや、普段からできる対策も紹介します。
個人情報の漏えいはどれくらい起きている?
個人情報保護委員会の年次報告によると、企業などの民間事業者から寄せられた個人データの漏えい等の報告は、令和6年度の1万9,056件から、令和7年度は1万7,139件に減りました。減ったとはいえ、1日あたり40件以上のペースです。
個人情報保護委員会は、書類の渡し間違い(誤交付)や、メール・郵便の送り間違い(誤送付)といったミスのほか、不正アクセスによる漏えいも多く見られるとしています。
漏えいは企業だけの話ではありません。令和7年度には、国の行政機関や地方公共団体などからも2,278件の報告があり、そのうち地方公共団体等が2,030件を占めています。身近な役所や学校から漏れることもある、ということです。
三重県でも起きている個人情報の漏えい
実際に、三重県内でも個人情報が漏れた可能性のある事案が起きています。
防災メールの配信システムに不正アクセス(2026年10月)
2026年10月、津市や松阪市などが防災メールの配信に使っている「SpeeCAN RAIDEN」というサービスが、第三者による不正アクセスを受けました。運営しているのは株式会社アルカディアです。
各市の発表によると、漏れた可能性がある情報は次のとおりです。
- 津市:防災情報メールの登録者のメールアドレス約1万9,000件、消防団などの参集メールの登録者の氏名・メールアドレス・所属など約4,200件、「徘徊SOSネットワーク津」の登録者の氏名・メールアドレス・電話番号など約900件。過去に配信したメール本文の履歴も含まれます(津市)。
- 松阪市:防災情報メールの市民3,812件(メールアドレス、住んでいる町名)と市職員1,599件(氏名、メールアドレス、所属など)、防災電話サービスの登録者38件(氏名、電話番号)(松阪市)。
防災のために登録したメールアドレスでも、漏れてしまうことがあるということです。松阪市は、登録したメールアドレスや電話番号に不審な連絡が来る可能性があるとして、心当たりのないメールのURLを開いたり、添付ファイルを開いたりしないよう呼びかけています。
漏れた個人情報は、誰の手に渡る?
漏れた情報がどこに流れたのかは、多くの場合、公表されません。ただ、国の資料からは、名簿として売買され、犯罪グループの手に渡るケースがあることがわかります。
実際に、個人情報保護委員会は令和7年度、特殊詐欺グループに渡る可能性を知りながら個人情報を提供していたとして、名簿業者2社に緊急命令や勧告を出しています。名簿に載っていた人たちは、特殊詐欺グループからの連絡にさらされ、平穏な生活を送る権利が侵害されたと認定されました(個人情報保護委員会 令和7年度年次報告 概要)。
国も、こうした不正に出回る名簿を「闇名簿」と呼び、対策を進めています。SNSで実行犯を募る強盗や特殊詐欺が相次いだことを受けて、政府の犯罪対策閣僚会議が令和5年3月にまとめた緊急対策プランにも、「闇名簿」対策の強化が盛り込まれました(犯罪対策閣僚会議 緊急対策プラン)。
漏れた個人情報は、どう悪用される?
① 特殊詐欺・強盗の「ターゲット選び」
個人情報保護委員会は、犯罪グループが「不正に入手した名簿」を使って高齢者などのターゲットをしぼり、強盗や特殊詐欺に及んでいると考えられる、と注意を呼びかけています(個人情報保護委員会)。
年齢・住所・家族構成がわかれば、「一人暮らしの高齢者」などを選んで電話をかけることができてしまいます。漏れた情報が、直接ではなく「ターゲットを選ぶ材料」として使われるのが怖いところです。
② アカウントの乗っ取り
パスワードが漏れた場合、同じパスワードを使い回している別のサービスにもログインされるおそれがあります。総務省も、あるサービスから流出したアカウント情報を使って、別のサービスに不正ログインを試す攻撃が知られているとして、パスワードの使い回しを避けるよう呼びかけています(総務省 国民のためのサイバーセキュリティサイト)。
ネット通販やSNSのアカウントを乗っ取られると、勝手に買い物をされたり、知人に詐欺メッセージを送られたりする被害につながります。
③ 偽メール・迷惑電話・しつこい勧誘
メールアドレスや電話番号が漏れると、通販サイトや宅配業者などを装った偽メール・偽SMSや、投資・不動産の勧誘が届くきっかけになります。本文に自分の名前が正しく書かれていると、つい本物だと思い込んでしまうので注意が必要です。
「流出のお知らせ」が届いたら、まずやること
- 何が漏れたかを確認する:氏名・住所だけなのか、パスワードやカード番号まで含まれるのかで、やるべきことが変わります。
- パスワードを変える:総務省は、パスワードを定期的に変える必要はないものの、流出したときは速やかに変えるべきとしています。漏れたサービスと、同じパスワードを使っている別のサービスは、すぐに変更しましょう。
- 二段階認証(多要素認証)を設定する:パスワードに加えて、スマホへの確認コードなどで本人確認をする仕組みです。パスワードが漏れても、ログインされにくくなります。
- カードの利用明細をチェックする:カード情報が含まれていた場合は、身に覚えのない利用がないか確認し、カード会社に再発行も相談しましょう。
- お知らせのリンクは押さない:「流出のお詫び」を装った偽メールもありえます。メールのリンクではなく、企業の公式サイトから情報を確認しましょう。
普段からできる対策
- 知らない番号からの電話は留守番電話にして、すぐに折り返さない
- 家族と「お金の話が電話で来たら、一度切って家族に相談する」と決めておく
- 懸賞やアンケートに、必要以上の個人情報を書かない
- パスワードはサービスごとに別のものにする
- パソコンやスマホに出る「ウイルスに感染しました」などの警告に書かれた電話番号には、電話しない
- 自治会・PTA・同窓会などの名簿は、不要になったら確実に処分する
まとめ
漏れた個人情報は、名簿として売買され、特殊詐欺や強盗のターゲット選び、アカウントの乗っ取りなどに使われるおそれがあります。実際に、特殊詐欺グループに名簿を渡した業者に、国が命令を出した例もあります。三重県内でも、防災メールの登録情報が漏れた可能性のある事案が起きており、決して他人事ではありません。
「流出のお知らせ」が届いたら、何が漏れたかを確認し、パスワードの変更や二段階認証など、できることから始めましょう。普段から知らない電話にすぐ出ない、家族で相談する習慣をつけておくことも、大切な対策です。
参考資料
- 個人情報保護委員会「令和7年度 年次報告 概要」
- 個人情報保護委員会「名簿を取り扱う皆様へ」
- 犯罪対策閣僚会議「SNSで実行犯を募集する手口による強盗や特殊詐欺事案に関する緊急対策プラン」(令和5年3月17日)
- 総務省「国民のためのサイバーセキュリティサイト」
- 津市「メール配信運営事業者への不正アクセスによる個人情報漏洩の可能性について」(令和8年10月14日)
- 松阪市「災害時情報配信システムへの不正アクセスによる情報漏洩の可能性について」


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