2026年8月、一見勝之知事は津市長からの県政要望を受けた場で、県庁所在地で駅前がさみしいのは山口と三重ぐらいだと述べました。県都の玄関口の課題を、県のトップが公の場で認めた発言です。
その津駅がいま、動き始めています。西口では2026年8月に工事が着手し、東口では国土交通省が「バスタ」の整備方針づくりに向けた検討を開始しました。
この記事では、国・県・市が公表している資料をもとに、津駅周辺で何が、いつ、どう変わるのかを整理します。
【用語解説】「バスタ」とは
先に言葉の整理をしておきます。
バスタは、バス・タクシー・鉄道など複数の交通手段の乗り場を1か所に集約した、大規模な交通ターミナルのことです。国土交通省は、こうしたターミナルを官民連携で全国に整備する「バスタプロジェクト」を進めています。
名前は2015年、国土交通省の公募で決まりました。応募1,733件から選ばれた案の命名理由は「Bus & Taxicab Terminal(バスとタクシーのターミナル)の略」でした。
翌2016年に開業したバスタ新宿では、バス会社ごとにバラバラだった高速バス乗り場が1か所にまとまり、JR新宿駅とデッキで直結しました。これを全国に広げようというのが、バスタプロジェクトです。
津駅周辺で進んでいる4つのこと
津駅の整備は、次の4本柱で進んでいます。
- 【西口駅前広場の再編】バス・タクシー・一般車の動線を整理し、歩行者が安全に歩ける広場へ。2026年8月に工事着手
- 【東口の交通ターミナル(バスタ)】国が整備方針の策定に向けた検討を開始。上部空間に民間の複合建築物を載せる構想も
- 【東西自由通路】改札の外で駅の東西を行き来できる通路。位置も高さもこれから
- 【ほこみち(歩行者利便増進道路)】東口の県道で歩道を広げ、ベンチやカフェを置けるようにする
このうちすでに工事が始まっているのは西口だけです。残りの3つは、それぞれ検討や協議の段階にあります。
西口|2026年8月、工事が始まった
津駅の整備で最初に形が変わるのが西口です。
いまの西口の何が問題なのか
現在の西口駅前広場には、こんな課題があります。
- バス停・タクシー乗り場・一般車の送迎スペースが入り組み、どこから何に乗れるのかが分かりにくい
- 歩行者の動線とバス・車の動線が交錯し、安全面に不安がある
- 大雨のときに道路が冠水することがある
送迎の車が停まる場所が定まらず、駅前が混雑する。雨が降れば水が溜まる。日常的に使っている人ほど、心当たりがあるのではないでしょうか。
何がどう変わるのか
津市が公表した整備イメージと報道によれば、西口では次のような整備が予定されています。
- 【バス・タクシー】待機場所を整理し、乗り場を分かりやすく配置
- 【一般送迎車】無料の待機場を16台分設け、送迎の車による渋滞を解消する
- 【排水】道路冠水対策として、雨水の排水処理能力を向上させる
最初に着手したのが排水工事でした。見た目が派手に変わる部分ではありませんが、冠水する駅前では避けて通れない工事です。足元から順に整えていく進め方になっています。
なお、東西自由通路の接続位置がまだ確定していないため、西口ロータリー東側のシェルターなどは暫定的な整備とされています。中長期的な西口の姿は、自由通路の議論と合わせて引き続き検討されます。
西口の整備スケジュール
西口の整備スケジュールは、「令和7年度 第3回 津駅周辺道路空間再編検討委員会」で次のとおり示されています。
- 【2025年度(令和7年度)】詳細設計
- 【2026・2027年度(令和8・9年度)】工事(2026年8月着手、2028年3月完了予定)
- 【2028年度(令和10年度)】供用開始
東口|バスタと複合建築物の構想
東口は、西口とは性格が異なります。こちらが「バスタ」の舞台です。
いまの東口
現在の東口ロータリーと駅前通りは、バス・タクシー・一般車が混在し、歩道も狭めで混雑しやすい状態です。
今後は、バス乗り場を行き先ごとに分かりやすく整理し、路上カーシェアやシェアサイクルといった新しい移動手段も組み合わせて、鉄道・バス・タクシー・カーシェアをまとめた「結節点」にすることが検討されています。
国が動き出した(2026年度)
2026年度、国土交通省は津駅周辺で集約型公共交通ターミナル「バスタ」を整備する方針の策定に向け、本格的な検討を開始しました。前葉泰幸市長は、これを次のステップに進んだものと評価しています。
事業化まで、あと何段階あるのか
津市が公表した資料には、国土交通省が交通拠点を整備するまでの流れが示されています。全部で6段階です。
- 【1】地域の交通課題の調査(津市が実施)
- 【2】交通拠点における機能強化の必要性等の調査|2021〜2025年度(令和3〜7年度)に実施 → 完了
- 【3】交通拠点の機能強化に関する整備方針の検討|2026年度(令和8年度)から ← いまここ
- 【4】交通拠点の機能強化に関する事業計画の検討
- 【5】事業計画の策定
- 【6】新規事業化
津駅周辺は2021年(令和3年)4月にバスタプロジェクトの調査箇所の一つに選定され、【2】の調査が始まりました。この調査の結果、津駅東口広場周辺の機能強化が必要と判断され、次の段階に進んだ形です。
逆に言えば、事業化まではまだ3段階あります。津市が2026年8月の県政要望で、バスタの早期事業化を国に働きかけるよう県に求めたのも、この構造ゆえです。県政要望は計108項目にのぼりました。
なお国は【2】の調査で、機能強化の方向性として交通機能・防災機能・交流等機能の3つを整理しています。バス・タクシー専用バースの設置や、高速バスも発着できるよう現況と同数の交通施設を確保することに加え、災害時の代替輸送や防災備蓄品の保管施設、一時避難者の受入スペースといった防災機能も検討対象に入っています。
バスタの「上」に建物を載せる構想
東口では、官民連携による複合建築物の整備構想も検討されています。。
津市が2025年7月に策定した「津駅周辺基盤整備の方向性(ビジョン)」の第4章には、東口エリアの整備方針として「交通ターミナルへの複合建築物(商業、宿泊、業務、居住等)の整備」と明記されています。同じ章には「市街地再開発の促進」も掲げられています。
では、どうやってターミナルの上に建てるのか。その手法を示しているのが、津市が2025年10月に公表したサウンディング型市場調査の実施要領です。ここには調査の目的として「道路法に基づく立体道路制度等を活用した複合建築物の建築による立体的な活用の可能性」を検討する、と書かれています。
立体道路制度は、道路の上下の空間に建物を建てられるようにする仕組みで、都市部の再開発で用いられてきました。バスターミナルと複合ビルを別々に建てるのではなく、ターミナルの上に建物を載せる。用地が限られる駅前で床面積を確保する手法と言えます。
駅を降りた人が、そのまま買い物や食事、宿泊、仕事にアクセスできる。そんな駅前の拠点をつくる狙いです。
東西自由通路|津駅は東西が「つながっていない」
意外に思われるかもしれませんが、津駅は改札の外から東西を行き来できません。
鉄道の定期利用者を除いて駅舎内を通行できないため、東口と西口を移動するには、地下通路か、駅南側の踏切を使って迂回する必要があります。
東西自由通路が整備されると、次のような効果が期待されます。
- 東口と西口を短いルートで直接行き来できる
- 西口の行政・ビジネス機能と、東口の商業・宿泊・バスタ機能が一本の動線でつながる
- デッキと組み合わせれば、雨の日でも濡れにくい移動ができる
ほこみち|バス待ちの時間を「過ごせる時間」に
東口の駅前通り(県道津停車場線)では、「ほこみち」の指定を見据えた歩道の拡張が検討されています。
ほこみち(歩行者利便増進道路)は、道路法の改正で創設された制度です。道路の一部を歩行者の利便増進を図る空間として指定することで、ベンチやテーブル、オープンカフェのテラス席、キッチンカーなどを継続的に置きやすくなります。イベントやマルシェも開催しやすくなります。
津駅東口で目指しているのは、こういう姿です。
- 車線数を見直して歩道を広げる
- 広がった歩道にベンチやカフェスペースを設ける
- バスを待つ時間を「ただ立って待つ時間」から「ゆっくり過ごせる時間」に変える
津駅前通りは県道のため、整備は三重県が担います。津市の資料によれば、県道津停車場線の整備は2027〜2030年度(令和9〜12年度)の予定で、デザインの検討・設計を経て整備に入る流れです。
あわせて県と市は、2026〜2028年度(令和8〜10年度)に公共空間を活用したイベントを共同で実施する予定です。実際に使ってみることで、歩道をどう広げるか、公園をどう整備するかの方針決定や、民間主体で公共空間を使いこなす体制づくりにつなげる狙いがあります。
誰が、いつ、何をするのか
津駅周辺の整備がややこしいのは、国・県・市がそれぞれ別の事業を、別のスケジュールで進めているからです。主体ごとに整理します。
国(国土交通省)が進めること
- 【2021〜2025年度】交通拠点の機能強化の必要性等の調査 → 完了
- 【2026年度〜】整備方針の検討 ← いまここ
- 【時期未定】事業計画の検討 → 事業計画の策定 → 新規事業化
三重県が進めること
- 【2026〜2028年度】県市連携のソフト事業(公共空間を活用したイベントの企画・実施・検証)
- 【2027〜2030年度】県道津停車場線の整備(デザイン検討・設計・整備)
津市が進めること
- 【2025年度】西口駅前広場の詳細設計 → 完了
- 【2026・2027年度】西口駅前広場の工事(2026年8月着手済み)
- 【2028年度】西口駅前広場の供用開始
- 【2028・2029年度】栄町公園等の整備(設計 → 整備)
- 【2025・2026年度】東口交通ターミナル上部空間の事業化検討調査
このほか、公共交通を補完する二次交通としてシェアサイクルのエリア拡大も並行して進められています。
結局いつ完成するのか
- 【西口駅前広場】2028年度(令和10年度)に供用開始予定
- 【県道津停車場線・ほこみち】2030年度(令和12年度)までに整備
- 【栄町公園等】2029年度(令和11年度)までに整備
- 【東口・バスタ】未定。事業化まであと3段階
- 【複合建築物】未定。事業手法の検討段階
- 【東西自由通路】未定。位置・高さ・事業手法をこれから協議
2030年度までに形になるのは、西口・県道・公園。東口のバスタと複合建築物、東西自由通路は、国の事業化や鉄道事業者との協議を経て具体化していくことになります。
三重県内のもうひとつのバスタ|近鉄四日市駅
実は、三重県内にはすでにバスタプロジェクトとして動いている駅があります。近鉄四日市駅です。
「一般国道1号 近鉄四日市駅交通ターミナル整備事業」は、2021年度(令和3年度)に新規事業化されました。中部圏で初めてのバスタプロジェクトです。
- 【事業主体】国土交通省(直轄事業)
- 【事業費】事業化時点(2021年度)で約75億円
- 【内容】国道1号・中央通りと一体となったバスターミナルの整備
津駅と並べると、立ち位置の違いがはっきりします。
- 【近鉄四日市駅】2021年度に新規事業化済み。国が直轄で整備
- 【津駅】同じ2021年に調査箇所として選定。2026年度から整備方針の検討に入った段階で、事業化はこれから
まとめ
- 津駅西口は2026年8月に工事着手。2028年度(令和10年度)の供用開始予定。一般送迎車の待機場16台分、排水能力の向上、シェルターの設置などが進む
- 東口は「バスタ」の舞台。国の手続きは全6段階あり、2021〜2025年度の調査を終えて2026年度から3段階目の「整備方針の検討」に入った。
- 東西自由通路は、位置・高さ・事業手法とも未定。西口の一部が暫定整備にとどまる原因にもなっている
- 東口の県道(津停車場線)は三重県が2027〜2030年度に整備する予定。「ほこみち」指定を見据え、歩道を現在の約5.5メートルから最大約12メートルに広げる案が検討されている
- 「バスタ」は2015年の公募で決まった愛称。応募1,733件から選ばれ、採用案の由来は「Bus & Taxicab Terminal(バスとタクシーのターミナル)」
参考
- 津市建設政策課 記者発表資料(2026年4月20日)
- 令和7年度 第3回 津駅周辺道路空間再編検討委員会 資料(特にP40:西口整備スケジュール)
- 津市「津駅周辺基盤整備の方向性(ビジョン)」(2025年7月策定)第4章 エリア整備の方向性
- 津市建設政策課「津駅東口交通ターミナル上部空間活用等検討に向けたサウンディング型市場調査 実施要領」(2025年10月6日)
- 三重県「津駅周辺道路空間の検討状況について」(歩道空間拡張の概略設計)
- 津市「津駅周辺道路空間検討の取組」
- 国土交通省中部地方整備局 三重河川国道事務所「国道1号近鉄四日市駅交通ターミナル整備事業」計画資料


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