県議会の議員は、どこの国へ、何人で、いくらぐらいかけて海外視察に行っているのでしょうか。
まる三重Newsでは、三重県に加えて、同じくらいの規模の県(大分県・群馬県・岐阜県など)の公開資料を調べました。政務活動費の領収書は、3県分で合わせて約6万8千ページを読み込んでいます。
調べてわかったのは、議員の海外視察には大きく分けて2つのお金の出どころがあるということです。
- 政務活動費から出るパターン:議員や会派に交付されるお金で行く
- 公費から出るパターン:議会として議員を派遣する(議員派遣)。県の予算の「議会費」から出る
この記事では、この2つのパターンごとに、行き先・回数・人数・費用をまとめます。
ひと目でわかる4県比較
まずは、調べた結果を1枚の表にまとめました。三重県・大分県・群馬県は政務活動費で行くパターン、岐阜県は公費で行くパターンです。

三重県の費用が大きく見えますが、三重県・大分県・群馬県の費用は、どれも政務活動費の中から使われた額(内数)です。政務活動費の全体に占める割合は、後ほどグラフで比べます。
2つのパターンの違い
政務活動費から出るパターン
政務活動費は、議員の調査研究などのために、県から会派や議員に毎月交付されるお金です。今回調べた県の金額は、議員1人あたり月30万〜33万円で、ほとんど同じでした。
このパターンの特徴は、領収書がインターネットで公開されている県なら、誰でも1円単位まで確認できることです。
公費から出るパターン
地方自治法にもとづく「議員派遣」として、議会の決定で議員を海外に送るパターンです。お金は県の一般会計の「議会費」から出ます。
このパターンでは、行き先や参加者、報告書は公開されていても、1回の視察にいくらかかったかは公開されていないことが多くあります。
調べ方

政務活動費のパターン
三重県・大分県・群馬県は、政務活動費の領収書(大分県は会計帳簿も)をインターネットで公開しています。令和5〜7年度(2023年4月〜2026年3月)の3年分をすべてダウンロードし、次のように調べました。
- 画像になっている領収書を、文字を読み取る技術(OCR)で文字データに変換
- 国名・都市名、「海外」「ビザ」「国際線」、外貨(ドル・ユーロ)、旅行会社名などで検索
- 見つかった領収書は、元の画像を見て、日付・行き先・金額を確認
調べたページ数は、三重県が18,332ページ、大分県が23,581ページ、群馬県が26,235ページです。
公費のパターン
各議会のホームページで公開されている報告書や発表資料、報道をもとにしました。費用が公開されていないものは、概算で記載しています。
注意点
- 政務活動費の金額は、領収書や帳簿に書かれた金額です。実際に政務活動費から出た額は、按分(あんぶん)などで少なくなっている場合があります。
- 文字の読み取りミスで見つけられなかった渡航がある可能性があります。数字は「少なくともこれだけ」という最低ラインです。
- 3県とも、令和5〜7年度の間は、議員団としての公費の海外視察を行っていませんでした(議長の公式訪問を除く)。つまり、同じ条件で比べています。
政務活動費から出るパターン(令和5〜7年度の3年間)

三重県:11件・延べ37人以上・少なくとも約1,877万円
- 行き先:
ベトナム(4回)、インド、台湾、パラオ、スペイン(2回。うち1回はフランス・ドバイも訪問)、アメリカ、行き先不明「海外旅行」1件 - 1人1回あたり:
約33万円(参加人数がわからないパラオ、スペイン〈2024年〉の視察を除いて計算) - 大きかった視察:
- インド(2026年1月、12人):約497万円
- パラオ(2024年4月、人数不明):約496万円
- 台湾・台南の「日台交流サミット」(2024年7月、8人):約209万円
- 行き先不明の「海外旅行」(2025年1月、3人):約180万円
大分県:7件・延べ44人以上・少なくとも約551万円
- 行き先:
台湾(4回)、インドネシア、韓国、モンゴル、タイ - 1人1回あたり:
約12.5万円 - 大きかった視察:
- 台湾「台湾プロモーション団」(2025年2月、19人):約173万円
- インドネシア(2024年2月、7人):約122万円以上
- 台湾(2024年8月、8人以上):約105万円
大分県の帳簿には「台湾視察経費」「モンゴル旅費」のように中身が書かれていて、追いかけやすくなっていました。宿泊費は上限を超えた分を政務活動費に含めない「打ち切り」の処理がされていました。
群馬県:8件・延べ30人・少なくとも約498万円
- 行き先:
台湾(3回)、ベトナム(2回)、韓国(2回)、アメリカ - 1人1回あたり:
約16.6万円 - 大きかった視察:
- 台湾(2024年4月、13人):約200万円(推計)
- 台湾・台南の「日台交流サミット」(2024年7月、5人):約95万円(推計)
- 台湾・雲林県(2025年10月、4人):約67万円
群馬県は、行き先・相手・目的・経費の内訳が1枚の報告書にまとめられていました。海外の宿泊費の上限(1泊25,700円)を超えた分は、報告書で訂正されていました。
なぜ三重県は1人1回あたりの金額が高いのか
1人1回あたりの金額は、三重県が約33万円、大分県が約12.5万円、群馬県が約16.6万円でした。三重県は大分県・群馬県の2〜3倍です。領収書や帳簿の中身を比べると、主に次の3つの要因が見えてきました。
行き先が遠い
三重県は、インド、スペイン(2回)、アメリカ、パラオなど、遠い国への視察が多くありました。たとえばインド視察では、航空運賃だけで1人229,000円かかっています。
一方、大分県と群馬県の行き先は、ほとんどが台湾や韓国など近い国でした。日程も2泊3日〜4泊5日程度が中心です。
なお、三重県でもベトナム・ホーチミンへの視察(2026年3月)は1人約19万円で、群馬県の台湾視察(1人約17万〜19万円)とほぼ同じ水準でした。近い国どうしなら、大きな差はありません。
上限や対象外の扱いが細かい
大分県と群馬県は、政務活動費から出す金額を細かく抑える運用をしていました。
- 大分県:宿泊費を上限額(1泊13,700円)で「打ち切り」にしていました。個人負担分や、欠席した議員の分は政務活動費の対象外としていました。
- 群馬県:海外の宿泊費の上限は1泊25,700円です。上限を超えた分は、報告書で訂正されていました。
三重県のガイドラインでは、航空運賃は「ビジネスクラスを上限」とし、日当や宿泊料は県の外国旅行の旅費の基準を「参考」にするとしています。ただ、今回の領収書からは、大分県のような上限での打ち切りや、群馬県のような訂正の処理は確認できませんでした。
公開の仕方の違い(注意点)
海外視察の費用が、どこまで政務活動費から出ているかの見えやすさにも、県によって違いがありました。
- 大分県:帳簿に「この支払いのうち、政務活動費から出したのは○円」と1件ずつ書かれています。個人で負担した分は差し引かれています。
- 三重県:公開されているのは、領収書と、項目ごとの合計額(収支報告書)です。三重県議会も「領収書の金額は、按分などにより収支報告書の支出額と一致しない場合がある」と注意書きしています。つまり、1枚の領収書のうち、いくらが政務活動費から出たのかまでは、外からはわかりません。
この記事では、三重県の金額は領収書に書かれた金額で計算しています。実際に政務活動費から出た額は、これより少ない可能性があります。
政務活動費の全体から見ると?
ここまでの金額だけを見ると、三重県が多く見えます。ただ、海外視察の費用は、毎年交付される政務活動費の中から使われたものです。海外視察をしたからといって、政務活動費の予算が増えるわけではありません。
そこで、3年間に実際に使った政務活動費の全体額と、そのうち海外視察に使われた割合を比べました。

政務活動費の全体額は、3県ともほぼ同じ規模です。議員1人あたりの月額も、三重県が33万円、大分県と群馬県が30万円と大きな差はありません。
違うのは使い道の配分です。三重県は、政務活動費のうち海外視察に回す割合が、大分県・群馬県の約3〜4倍でした。
公費から出るパターン

岐阜県:議会として毎年のように派遣
岐阜県議会は「海外事情調査」として、公費で議員を海外に派遣しています。報告書はすべてホームページで公開されていますが、費用は書かれていません。
令和5〜7年度の派遣は次のとおりです。
- 2023年7月:台湾・シンガポール・マレーシア(1人)
- 2023年7〜8月:アメリカ・アルゼンチン・ブラジル(3人)
- 2023年8〜9月:フランス・ポーランド・ハンガリー(5人)
- 2023年8〜9月:ポーランド・ハンガリー(1人)
- 2024年4月:ドイツ・スイス(1人)
- 2024年7月:ウズベキスタン・ドイツ(2人)
- 2025年4月:アメリカ(8人)
合計で7件・延べ21人です。概算の費用は約2,000万〜3,000万円です(概算の方法は後で説明します)。
なお、岐阜県では政務活動費での海外視察も認められていますが、領収書がインターネットで公開されていないため、そちらは確認できませんでした。
大分県:2026年に8年ぶりの公費視察
大分県議会は2026年、8年ぶりに公費で海外視察を行いました。
- 行き先:フランス、スイス、ドイツ(3班に分かれて訪問)
- 人数:22人
- 費用:予算3,420万円(実際の額は精査中と報道されています)
- 1人あたり:約155万円
この1回だけで、三重県の政務活動費による海外渡航の3年分(約1,877万円)を上回ります。
京都府:2班・20人を派遣
京都府議会は2025年11月9日〜15日、公費で2つの調査団を同じ日程で派遣しました。
- 台湾・シンガポール調査団:議員10人(ほかに随行職員2人)
- インド調査団:議員10人(ほかに随行職員2人)
実際に使った費用は公開されていません。ただ、旅行会社を選ぶ公募の資料に、費用の上限が書かれていました。
- 台湾・シンガポール調査団:1,392万9,000円以内
- インド調査団:1,624万6,000円以内
2つの調査団を合わせると、上限は約3,018万円です。議員の航空券は、ビジネスクラスの確保を優先する条件でした。
各県の議長の公式訪問
政務活動費とは別に、議長の公式訪問も公費で行われています。
- 三重県:2023年8月 ブラジル(県人会の記念式典)、2025年5月 インドネシア(議長と議員4人、事務局1人)
- 群馬県:2025年8〜9月 ブラジル(副知事・議長と職員)
いずれも費用は公開されていません。たとえば三重県のインドネシア訪問(4日間・議員5人)は、概算で約150万〜250万円です。
費用の概算方法
公費の視察で費用が公開されていないものは、次の目安に人数をかけて概算しました。
- 欧州・南北アメリカなど遠い地域:1人あたり約100万〜150万円
- 香川県議会の「海外派遣要領」では、旅費の目安が「1人100万円程度」とされています
- 大分県の2026年の欧州視察は、予算ベースで1人あたり約155万円でした
- アジアなど近い地域:1人あたり約30万〜50万円
- 三重県のインド視察(政務活動費)は1人約36万〜44万円でした
あくまで目安であり、実際の金額とは違う可能性があります。
三重県は、かつて「公費」で行っていた
今は政務活動費で海外視察を行っている三重県議会ですが、以前は公費で行っていました。
三重県議会の「政務活動費ガイドラインに関する検討プロジェクト会議」の資料によると、経緯は次のとおりです。
- 以前は、海外視察を公費で行っていました。議員1人あたり4年の任期中に1回まで、費用は120万円までというルールでした。
- 2007年(平成19年)5月31日、「海外視察調査は議員派遣(公務)ではなく、政務活動費で行う」ことが決定。
- 2008年(平成20年)3月に作られた「政務調査費の運用に係るガイドライン」に、海外政務活動の手続きが盛り込まれました。それ以降、海外政務活動についての記載は見直されていません。
つまり、三重県は2007年に「公費型」から「政務活動費型」に切り替えた県です。三重県議会の広報紙「みえ県議会だより」では、2006年まで「海外調査報告」の欄がありましたが、2007年以降は見当たりません。その理由も、この切り替えだと考えられます。
三重県議会で進む見直しの議論
三重県議会では、2026年2月に設置された「政務活動費ガイドラインに関する検討プロジェクト会議」で、海外視察の報告のあり方が議論されています。
現在、海外視察の報告書は県議会のホームページには掲載されていません。2026年9月17日の会議では、海外視察の報告書のホームページでの公開について、多くの会派が「進めるべき」との考えを示しました。
今回の調査でも、三重県の海外視察の費用は、領収書を1枚ずつ確認しなければわかりませんでした。報告書がホームページで公開されるようになれば、県民が確認しやすくなります。今後の議論の行方に注目です。
まとめ
- 議員の海外視察には、政務活動費から出るパターンと公費から出るパターンがあります。
- 政務活動費で比べると、三重県は3年間で約1,877万円と、大分県(約551万円)・群馬県(約498万円)の約3.5倍でした(三重県は領収書に書かれた金額で計算しています。実際に政務活動費から出た額は、これより少ない可能性があります)。
- ただ、政務活動費の規模そのものは3県ともほぼ同じです(3年間に実際に使った額は、三重県約4.13億円、大分県約4.00億円、群馬県約4.54億円)。三重県は、その中で海外視察に回す割合が大分・群馬の約3〜4倍でした(三重県約4.5%、大分県約1.4%、群馬県約1.1%)。
- 三重県の金額が大きいのは、インドやパラオ、スペインなど遠い国への大型の視察が多いためです。大分県・群馬県は台湾や韓国など近い国が中心でした。
- 一方、公費のパターンでは、岐阜県が3年で概算2,000万〜3,000万円、大分県が1回で予算3,420万円と、公費のほうが1回あたりの金額が大きく、しかも費用が見えにくい傾向がありました。
- 三重県は2007年に、海外視察を公費(任期中1人1回)から政務活動費に切り替えました。今、海外視察の報告書をホームページで公開する方向で議論が進んでいます。
政務活動費で行くパターンは、領収書が公開されていれば誰でも中身を確認できます。公費のパターンも含めて、「どこで何を学び、県政にどう生かしたのか」が見える形で公開されることが大切だと感じました。
出典
- 三重県議会「政務活動費」
- 三重県議会「政務活動費ガイドラインに関する検討プロジェクト会議」
- 同会議 2026年5月14日 議事概要
- 同会議 2026年6月26日 議事概要
- 同会議 2026年9月17日 議事概要
- 同会議 2026年9月17日 会議資料(海外政務活動の経緯)
- 三重県議会「三重県議会議長のインドネシア訪問について」
- 三重県議会 議長の主な動き(2023年8月 ブラジル訪問)
- 大分県議会「政務活動費収支報告書及び会計帳簿等」
- 大分県議会「政務活動費」(使途基準マニュアル)
- 群馬県議会「政務活動費」
- 群馬県「在伯群馬県人文化協会創立80周年記念式典等への出席について」
- 岐阜県議会「海外事情調査」
- 岐阜県議会「政務活動費」
- 京都府議会「令和7年度 海外調査」
- 香川県議会「海外派遣要領」
- 総務省「政務活動費に関する調」(令和5年4月1日現在)


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