本記事では、全国各地の公共交通が不便な地域で、導入が検討されている「デマンド交通」についてご紹介します。
なお、本記事では、「令和6年度津市地域公共交通活性化協議会の議事録」と「津市議会の議事録」を参考に作成しています。
デマンド交通とは
デマンド交通とは、路線バスとタクシーの中間的な位置にある交通機関です。
利用者が事前予約することで、希望する時間や場所に合わせて運行されるサービスで、従来の定時・定路線型のバスとは異なり、利用者のニーズに応じて柔軟に運行ルートやダイヤを設定できるため、過疎地域や高齢化が進む地域での移動手段として注目されています。
特に、バスの利用者が減少している地域や、従来のバス路線ではカバーしきれないエリアでの移動支援策として、全国的に導入が進められています。
津市の公共交通の現状と課題
津市では、路線バスやコミュニティバスなど多様な公共交通手段が運行されています。しかし、人口減少や高齢化、ライフスタイルの変化により、バスの利用者数は目標値に届かない路線も多く、特にコミュニティバスの一部ルート(長野・榊原ルートなど)では、1便当たりの利用者数が運行維持基準を下回っている現状があります。
こうした背景から、地域の実情に合った新たな交通サービスの導入が求められてきました。
デマンド交通導入への検討経緯
津市では、従来のコミュニティバスに代わる新たな移動手段として「デマンド型交通」の導入を本格的に検討しています。この取り組みは、高齢化の進展や人口減少に伴う公共交通の利用者減少という課題に対応するため、都市計画部と健康福祉部が連携して推進しているものです。
両部局では、これまでのコミュニティバス運行で明らかになった課題(路線維持の困難さ・利用者の偏りなど)や、高齢者の通院・買い物支援ニーズを詳細に分析。全国の先進事例から得られた知見や、他都市で指摘されている課題(運営コストの高さ・予約システムの運用負荷など)を調査しています。
デマンド交通は「予約制」「柔軟なルート設定」といった特徴から過疎地域の移動課題解決に有効とされますが、単純な導入では持続可能性を確保できません。このため津市では、地域特性(市街地と中山間部の混在・高齢化率の地域差など)を踏まえた独自の運用モデル構築に向け、庁内横断的な協議を重ねている段階です。
実証実験の計画と今後の方向性
津市では、美杉地域において、令和6年10月21日(月)から約2か月間でデマンド交通の実証実験を行いました。運行車両は14人乗りトヨタハイエースで、乗車人数は運転席、助手席を除いた12人までです。

画像はイメージ(photoAC)
実証実験を通じて、実際の利用状況や運行上の課題、地域住民のニーズを検証し、今後の本格導入に向けた課題整理を進める方針です。
また、コミュニティバスの次期再編に向けて、デマンド型交通を含めた新たな移動支援策のあり方を研究し、市全域を見据えた持続可能な公共交通ネットワークの構築を目指しています。
デマンド交通がもたらす期待と課題
デマンド交通の導入により、利用者は自分の都合に合わせて移動できる利便性が向上し、特に高齢者や車を持たない住民にとって大きなメリットとなります。一方で、予約や運行管理の仕組みづくり、運転手の確保、運行コストの増加など、解決すべき課題も少なくありません。また、利用者が少ない時間帯やエリアでの効率的な運行方法や、既存のバス路線とのすみ分けも重要な検討ポイントです。
全国の先行事例でも、デマンド交通の導入には地域の実情に合わせた柔軟な運用と、住民の理解・協力が不可欠であることが分かっています。津市でも、実証実験を通じてこれらの課題を一つひとつ検証し、より良いサービスの実現を目指しています。
まとめ
津市では、人口減少や高齢化、バス利用者の減少といった地域課題に対応するため、デマンド交通の導入を本格的に検討しています。令和6年度には美杉地域を含む市内3地域で実証実験が行われ、今後の公共交通の新たな形として期待が高まっています。
デマンド交通は、地域住民の多様なニーズに応える柔軟な移動手段として有望ですが、運営面やコスト面の課題も多く、慎重な検証と段階的な導入が求められます。今後も住民や関係者の意見を反映しながら、持続可能で利便性の高い公共交通ネットワークの構築を進めていくことが重要です。
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