令和7年11月26日から12月17日までの22日間にわたり開催される松阪市議会第5回定例会。
18名の議員による一般質問が行われ、市民生活に直結する多様なテーマが取り上げられました。この記事では、議論された内容について、表も使って、わかりやすくまとめています。
松阪市議会の基本情報
松阪市議会の会派構成と勢力図
| 会派名 | 議員数 |
|---|---|
| 至誠会 | 6名 |
| 政風会 | 5名 |
| 市民クラブ | 4名 |
| 日本共産党 | 2名 |
| 公明党 | 2名 |
| 会派に所属しない議員 | 5名 |
| 全議員 | 24名 |
主な特徴:
- 至誠会が6名(25.0%)で最大会派を占めています
- 政風会は5名(20.8%)で第2勢力です
- 市民クラブは4名(16.7%)で第3勢力です
- 日本共産党と公明党はそれぞれ2名(8.3%)です
- 会派に所属しない議員が5名(20.8%)と相当数存在
松阪市議会の24名の議員は、複数の会派に分かれて活動しており、権力が比較的バランスよく分散されています。
至誠会が最大会派で6名(全議員の約4分の1)を占めていますが、議会運営に必要な過半数(13名以上)には達していません。つまり、至誠会だけではすべての議案を進めることはできず、他の会派や議員との協力が不可欠な構造になっているのです。
さらに注目すべきは、会派に所属しない5名の議員が全体の約5分の1を占めているという点です。
これは日本の地方議会では比較的珍しく、松阪市議会の独特な特徴となっています。これらの独立した議員は、特定の会派の方針に縛られず、市民の声や各議題の内容に基づいて自由に判断・質問することができます。
松阪市議会の会派別議員所属一覧
| 会派 | 議員名 | 役職等 |
|---|---|---|
| 至誠会 | 沖 和哉 | ◎代表 |
| 濱口 高志 | 議長 | |
| 野呂 一平 | 監査委員 | |
| 松原 里穂 | ||
| 森 遥香 | ||
| 深田 龍 | ||
| 政風会 | 市野 幸男 | ◎代表 |
| 松本 一孝 | ||
| 赤塚 かおり | ||
| 米倉 芳周 | ||
| 山本 芳敬 | ||
| 市民クラブ | 吉川 篤博 | ◎代表 |
| 楠谷 さゆり | 副議長 | |
| 酒井 由美 | ||
| 橘 大介 | ||
| 日本共産党 | 久松 倫生 | ◎代表 |
| 殿村 峰代 | ||
| 公明党 | 小野 建二 | ◎代表 |
| 奥出 かよ子 | ||
| 会派に所属しない議員 | 海住 恒幸 | |
| 森本 哲生 | ||
| 田中 正浩 | ||
| 小川 朋子 | ||
| 西口 真理 |
令和7年11月定例会の概要と審議内容
一般質問は12月4日、5日、8日、9日の4日間にわたって実施され、18名の議員が登壇しました。
質問方式は一問一答方式が17名、分割方式が1名となっており、ほとんどの議員が一問一答形式で執行部と直接やりとりする形式を選択しました。
24名の議員のうち18名が一般質問
令和7年11月定例会では、24名の議員のうち18名が一般質問を行いました。一般質問を見送った議員は6名でした。
| 議員名 | 会派 | 役職 | 備考 |
|---|---|---|---|
| 濱口 高志 | 至誠会 | 議長 | 議長は議会運営の公正性を保つため、一般質問は行わない慣例がある |
| 楠谷 さゆり | 市民クラブ | 副議長 | 副議長は議会運営の公正性を保つため、一般質問は行わない慣例がある |
| 野呂 一平 | 至誠会 | 監査委員 | 監査委員は議会の監視機能を担う役職のため、一般質問は行わない慣例がある |
| 赤塚 かおり | 政風会 | ー | 質問を見送った理由は不明 |
| 市野 幸男 | 政風会 | ー | 質問を見送った理由は不明 |
| 山本 芳敬 | 政風会 | ー | 質問を見送った理由は不明 |
一般質問の全体像―18名の議員が取り上げたテーマ
今回の11月定例会では、18名の議員が合計56件のテーマについて質問を行いました。質問内容は大きく分けて、教育・子育て支援(14件)、行政運営・政策推進(17件)、防災・安全対策(9件)、医療・介護・福祉(7件)、産業振興・地域活性化(6件)、その他(3件)に分類できます。
教育・子育て支援の分野では、子どもの自死対策、不登校支援、タブレット教育の財源確保、特別支援教育、英語教育など、多様な課題が取り上げられました。行政運営・政策推進の分野では、補助金、パブリックコメント、公共交通支援、DX推進、松阪市長杯、共同親権制度、在留外国人対応など、行政全般にわたる課題が質問されました。防災・安全対策では、総合防災訓練、獣害対策、交通安全、ジャンボタニシ駆除など、市民の安全に関わる課題が多く取り上げられました。医療・介護・福祉では、2025年問題への対応、市民病院の指定管理、障がい者支援、応急診療体制など、社会保障の重要な課題が議論されました。
会派別・分野別質問数の分析
会派別に質問の分野を分析すると、各会派の政策スタンスが明確に浮かび上がります。以下の表は、各会派がどの分野で何件の質問を行ったかを示しています。
| 会派 | 教育・子育て支援 | 医療・介護・福祉 | 防災・安全対策 | 産業振興・地域活性化 | 行政運営・政策推進 | その他 | 合計 |
|---|---|---|---|---|---|---|---|
| 至誠会 | 7 | 0 | 1 | 1 | 1 | 2 | 12 |
| 政風会 | 1 | 0 | 0 | 1 | 4 | 0 | 6 |
| 市民クラブ | 4 | 0 | 3 | 2 | 1 | 0 | 10 |
| 日本共産党 | 0 | 3 | 0 | 1 | 1 | 0 | 5 |
| 公明党 | 1 | 1 | 2 | 0 | 2 | 0 | 6 |
| 会派に所属しない議員 | 1 | 3 | 3 | 1 | 8 | 1 | 17 |
| 合計 | 14 | 7 | 9 | 6 | 17 | 3 | 56 |
この表から以下のことが読み取れます。至誠会は教育・子育て支援(7件)に特に力を入れており、子どもに関わる施策を重視する姿勢が明確です。政風会は行政運営・政策推進(4件)に最も多くの質問を集中させており、行政効率化や産業振興に関心が高いことがわかります。市民クラブは教育・子育て支援(4件)と防災・安全対策(3件)に力を入れており、市民の安全と教育の質向上をバランスよく重視しています。
日本共産党は医療・介護・福祉(3件)に質問を集中させており、社会保障充実の姿勢を示しています。公明党は防災・安全対策(2件)、医療・介護・福祉(1件)、行政運営・政策推進(2件)、教育・子育て支援(1件)とバランスのとれた質問をしており、生活の安全と福祉の充実に重点を置いています。会派に所属しない議員は、行政運営・政策推進(8件)に最も多く、医療・介護・福祉(3件)、防災・安全対策(3件)と、多様な分野で質問を行っており、独立した視点から市政を監視する役割を果たしていることがわかります。
注目の質問内容を詳しく解説
議員と市とのやりとりの概要
【酒井議員】第三の居場所づくり~メタバースを活用した不登校支援
議員酒井議員
「松阪市でも不登校の子どもが増えている。学校と家庭の“二つの場所”だけではしんどい子にとって、『第三の居場所』が必要だと感じている。不登校の子どもたちの現状を、市はどのように把握しているのか。」



市役所
「不登校の児童生徒数は年々増加傾向にあり、背景もいじめや人間関係、病気、発達特性などさまざまで、一人ひとり状況が違う。校内適応指導教室やスクールカウンセラー配置などで支援しているが、十分とは言えず、課題を感じている。」



酒井議員
「外には出られない子が、仮想空間なら参加できたという事例を見てきた。教室にも保健室にも行けない子にとって、オンライン上の“第三の居場所”は大きな可能性がある。
メタバース空間を活用し、アバターで入れる教室や居場所を松阪市でも作れないか。市として、この考え方をどう受け止めるか。」



市役所
「メタバースは、対面が難しい子どもにとって心理的ハードルを下げる手段になり得ると認識している。一方で、ネット環境の格差や、オンラインだけで完結しない支援の在り方など、慎重に検討すべき点もある。すぐに導入するとまでは言えないが、先行事例の情報収集を行い、可能性を研究していきたい。」
【殿村議員】松阪市民病院の指定管理移行



殿村議員
「松阪市民病院が済生会の指定管理に移行するというが、今の厳しい医療経営の環境の中で、本当に“市民の病院”としてやっていけるのか、とても心配している。
赤字だからといって、救急や小児、周産期といった採算の取れない医療が削られたり、診療科が減らされたりしては困る。指定管理になっても、こうした分野をきちんと守れると言い切れるのか。」



市役所
「ご懸念はもっともで、市としてもそこを一番重く見ている。
指定管理者との協定では、救急や小児などの政策医療を継続すること、市民が必要とする医療機能を守ることをしっかり盛り込んでいる。」



殿村議員
「本当に続けられるかどうかが問題だ。医師が集まらない、赤字が出るとなったとき、“やむを得ない”といって縮小されてしまうのではないか。市は、済生会まかせにせず、どこまで踏み込んで関与するつもりなのか。」



市役所
「任せきりにはしない。指定管理期間中も、市は定期的に協議・報告の場を持ち、経営状況や医療提供体制をチェックする。必要があれば改善を求めるし、市としての意見もはっきり伝える。」



殿村議員
「赤字だからといって医療水準が下がったり、必要な投資が削られたりしては困る。市はどのような支援を行い、どうやって経営を支えていくのか。」



市役所
「指定管理に移行した後も、市として一定の支援は行う。たとえば、病院が導入する高額な医療機器については、1,000万円以上のものを対象に、購入金額の2分の1を上限として補助する仕組みを設ける。また、地域医療を維持するために必要な部分については、ほかにも補助を行う。」
【小川議員】熊等の野生獣害被害対策



小川議員
「熊について、現状を丁寧に把握し、必要以上に恐れず、しかし油断もしないために、市としてどんな合理的な備えができるか確認したい。
市内のツキノワグマ出没状況は、令和5年度8件、令和6年度7件、令和7年度は現在6件の目撃があり、そのうち“熊と確定”されたのは令和5年度と7年度に1件ずつで、いずれも誤捕獲。実質的には確定目撃はほぼゼロと言える。この状況を市はどう捉えているか。」



市役所
「環境省が令和6年度に行った調査では、紀伊半島地域個体群の推定生息数は468頭(昭和59年は180頭)、そのうち三重県内は110頭とされ、生息数は過去より増えている。熊が生息している以上、出没リスクはある。しかし、現在まで熊による農作物被害の相談や報告はなく、出没情報も少ないことから、現時点では『人の生活圏に頻繁に出没している状況ではない』と捉えている。」



小川議員
「過度な報道で不安が先行し、外出控えなど生活への影響も出かねない。正しい生態知識や遭遇時の行動などを、市民にどう伝えていくのか。」



市役所
「県の『ツキノワグマ出没情報マップ』やアプリもあるので、住民や観光客には積極的な活用を呼びかけたい。」



小川議員
「必要以上に恐れを広げないためにも、正しい情報を分かりやすく届け、合理的な備えを促すことが大切だと感じる。
例えば、熊スプレーの購入やレンタル費の補助は、市の負担が比較的少ない対策だと考えている。例えば、飯高町の全世帯1,500世帯に2,000円を補助しても、必要額は300万円である。市民の安心と命の重みを考えれば、こうした補助は有効な対策の一つになり得るのではないか。」
まとめ―市民生活に直結する議論が展開された11月定例会
令和7年11月第5回松阪市議会定例会では、18名の議員が市民生活に直結する56件のテーマについて質問を行い、松阪市が直面する多様な課題に対する活発な議論が展開されました。
2025年問題を見据えた介護保険計画の策定、指定管理者制度に移行する市民病院の将来、子どもの自死対策や不登校支援といった教育課題、全国的に被害が相次ぐ獣害対策、GIGAスクール構想におけるタブレット教育の財源確保など、喫緊の課題が取り上げられました。
市民の皆様には、議会中継の録画放送やホームページで公開される議事録を通じて、議会の活動をぜひご覧いただきたいと思います。松阪市議会は今後も市民の声を代弁し、市政の課題解決に向けた議論を続けていくことが期待されます。










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