津エアポートラインの現状と新造船スケジュール|代替船REDBIRDと市議会で明かされた最新情報も解説

 津エアポートラインは、津なぎさまちと中部国際空港セントレアを最短ルートで結ぶ、津市にとって欠かせない海上アクセスです。 しかし2024年、2隻体制の一角を担っていた高速船「フェニックス」のエンジンが故障し、修理も難しいことが明らかになりました。 その結果、「当面の運航をどう維持するか」と「新しい船をいつ、どう作るか」という二つの課題に同時に向き合うことになりました。 本記事では、現状の船の体制、代替船「REDBIRD」の情報、津市議会での具体的なやりとり、新造船のスケジュール感を整理していきます。​

目次

津エアポートラインはいまどうなっているのか

まずは、「もともとどういう体制で運航していて、いまどう変わっているのか」を整理します。​

現在の船の状況

項目内容
本来の体制高速船2隻体制
(①フェニックス ②カトレア)​
現状①フェニックス → 故障
②カトレア   → 稼働中​
2024年5月にフェニックスのエンジンが故障、検証の結果「修理は難しい」と判断​
故障後の課題2隻体制が維持できず、残る1隻に負荷が集中するリスクが発生​
当面の対応事業者が代替船を手配し、暫定的な2隻体制の回復を目指す方針​

 2隻体制が前提のダイヤを1隻で回すのは現実的ではなく、欠航リスクや利便性低下がどうしても大きくなります。 そのため津市と事業者は、新造船を中長期の解決策としつつ、短期的には代替船を入れることで「まずは航路を維持する」ことを最優先にしています。​

代替船「REDBIRD」の運航開始と基本情報

代替船として登場するのが「REDBIRD(レッドバード)」です。​

写真:REDBIRD(令和7年12月撮影)

REDBIRDの基本情報・運航イメージ

項目内容
船名REDBIRD(レッドバード)​
役割フェニックス故障に伴う代替船としての運航​
運航開始予定1月末の運航開始を目指して準備中​
ダイヤ(時刻表)現在検討中で、令和8年1月13日以降に告知予定​
所要時間津〜セントレア間はおおむね60分を予定​

 利用者から見ると、「1月末から新しい赤い船が走り始めて、だいたい今まで通り1時間くらいで行ける」というイメージで捉えると分かりやすい状況です。 ダイヤの詳細は令和8年1月13日以降の公式発表を待つ必要がありますが、「REDBIRDの投入で、2隻体制に近い形を取り戻す」方向性ははっきりしています。​

新造船スケジュールの見通し(変更の可能性あり)

段階時期の目安内容
仕様の方向性整理令和8年度国の補助事業公募を見据え、検討委員会で船の仕様の方向性を出す​
基本設計令和9年度の早い時期(最速案)決まった仕様をもとに基本設計に着手​
建造工事令和9〜10年度造船所の状況などを踏まえつつ建造工事に入る​
就航令和11〜12年度ごろ条件が順調に整えば、新造船が実際に航路に就く可能性​

 上記は、令和7年第4回津市議会定例会の答弁から引用したものでありますが、あくまで「国の補助事業が活用でき、議論が順調に進んだ場合の最速パターン」という前提であり、ここから遅れる可能性もあります。 とはいえ、「おおむね今後5年前後のスパンで新造船就航を目指す」という大まかな時間軸は、この議論から見えてきます。​

新造船の費用をどう捻出するのか

新造船には多額の費用がかかるため、「どの財源を組み合わせていくか」が大きな焦点になります。​

想定されている主な財源手段

区分手段説明
公的支援国の補助金新造船建造に使える補助事業を活用することを前提に検討​
公的支援三重県からの支援県に対して新造船への積極的な支援を要望中​
市独自+民間クラウドファンディング市民やファンから広く資金を募る手法として検討対象​
市独自+企業企業版ふるさと納税企業の寄付を通じて、税制優遇を受けながら資金を集める仕組み​
市独自+企業ネーミングライツ船名や関連施設に企業名を冠する代わりに協賛金を得る手法​

 財源確保に向けては、市民や企業の参画を得ながら仕組みを構築することが重要視されています

現在の2隻の建造費は?

 津エアポートラインの現在の2隻(フェニックスとカトレア)は、津市が約9億2,000万円をかけて建造した高速船です。 建造費は、赤塚グループからの寄付金約5億円、三重県の補助金約2億円を活用して、1隻あたりの建造費は約4億6,000万円です。

 この2隻を津市が保有し、公設民営方式で民間事業者の津エアポートライン株式会社に貸し付けて運航しているため、船体そのものの整備費用は主に寄付金・県補助金・市負担で賄い、運航費は運賃収入などでカバーする構造になっています。

新造船の建造費は10億?

 建造費用は8億~10億円とも想定されますが、船の仕様はまだ決まっておらず、詳細な費用はまだ公表されていません。

一般的な造船費用はいくら!?他の事例を紹介

項目高速船「フェニックス」
(津エアポートライン)
高速船「甑島」         ジェットフォイル「ヴィーナス2」
全長31.45m45.7m30.8m
船種双胴型一般的な単胴型ジェットフォイル
(水中翼船・ボーイング929型)
建造費
(1隻)
約4.6億円約13億円超約25億円前後(推定)​
建造・就航時期2005就航2014年就航1985年建造
2000年に現在の航路へ就航(中古導入)
航海速力約30ノット級
(時速約55km)
約30ノット級
(時速約55km)
約40ノット級
(時速約80km超)
旅客定員108人規模200人257人(1階157人・2階100人)
主な航路【三重県】
津なぎさまち〜中部国際空港セントレア
約40km
【鹿児島県】
川内港〜甑島各港
約40km~​
【福岡県】
博多港〜壱岐・対馬
約65km~​

 甑島とフェニックスはいずれも「地方の生活・観光を支える高速船」だが、建造費は甑島が約13億円とフェニックスの1隻あたり約4.6億円よりかなり高く、規模や仕様の違いが反映されている。

 一方ジェットフォイル「ヴィーナス2」は、建造時点で約25億円とさらに高額で、速度も40ノット級と別格の性能を持つため、現在その後継船の更新費用は約78億円規模にまで膨らんでおり、「高速性と快適性」を突き詰めた結果、地方単独では到底負担しきれない水準になっています。

県とのコミュニケーション状況と課題

観点内容
県議会(令和7年12月)での論点舟橋議員が、新造船への県支援を知事に質問​
知事答弁のニュアンス「津市から県に具体的な話が来ていない」と受け取れるような答弁がなされ、市側に違和感​。
市側の対応フェニックス故障以降、担当部局・副市長・市長が県担当課や知事に対し、状況報告と支援要望を重ねてきたと説明​
今後の課題県が求める「具体策」のレベル感を再確認しつつ、引き続き協議・要望を続ける必要がある​

 ここはどうしても「認識ギャップ」が生じやすい部分であり、どこまでを事務レベルで詰めてから政治レベルの判断に上げるのか、というプロセスの整理も含めて、今後の注目ポイントです。​

まとめ:REDBIRDと新造船、数年スパンで追いかけたい動き

 津エアポートラインは、フェニックス故障というアクシデントをきっかけに、「代替船で当面の運航を確保しつつ、新造船で中長期の安定を図る」という二重の課題に向き合っています。

 目先の動きとしては、代替船REDBIRDの1月末運航開始と、12月23日以降に告知される新ダイヤ、そして約60分の所要時間が、利用者にとっての重要な情報になります。 一方で、新造船については、国の補助事業や三重県の支援を活用しながら、令和9〜10年度の建造、令和11〜12年度の就航を目指す“最速シナリオ”が示されました。​

はなお
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コメント

コメント一覧 (2件)

  • 津市と両備の契約で新造船は両備が建造することになってたと思うのですが、なぜ税金投入の方向なのでしょうか?またコロナ時にも運営に関連して契約にない税金が多様な形で投入されたと聞いてます。
    本当に必要な公共交通機関なのでしょうか?

    • コメントありがとうございます。
      最近の公共交通は、人口減少等により民間企業の力だけでは維持が難しくなっており、津市に限らず、公設民営(施設は自治体が保有し、運営は民間が担う)で運営する事例が多くなってきています。 そのため、津市が施設(船)を購入しようとしているのは、津エアポートラインの維持を目指す中で、一定程度は自然な流れだと考えられます。 津市付近からセントレアへは電車など他の手段もあるため「本当に必要か」と疑問に思うのは当然ですが、市や国は「県庁所在地と空港を直結する数少ない公共交通」と位置付け、地域のアクセス改善や観光誘客の観点から必要と判断しているようです。 ただし、新造船の建造費や今後の税負担を検証する際には、「この航路を今後も維持するのか」を含めて、市民も交えた場で丁寧に議論していくことが不可欠だと思います。

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